使ってみてください!「やさしい日本語」
日本人も外国人も、誰もが生きやすい世の中とは?
お互いが「わかりあえる言葉」でコミュニケーションがとれる社会です。

日本社会では、今、日本語を母語としない人が増えていますが、その人たちの多くが「わかりやすい日本語=やさしい日本語」なら理解できます。日本語が母語の皆さんも、一般的な日本語の言葉や表現を、相手に合わせて工夫し言い換えていくことで「やさしい日本語」にすることができます。
今の日本で、もっとも多くの人が「わかりあえる言葉」は英語や、一般的な日本語ではなく、「やさしい日本語」なのです。
例えば、一般的な日本語⇒やさしい日本語 は次のような言い換えをします。


緊急に避難してください⇒はやく にげて ください
料金は前払いでお願いします⇒さきに、おかねを はらって ください

「やさしい日本語」について 少し詳しく説明を

最近は、再び町で外国人を見かけることが多くなりました。また、企業や工場、学校などで、日常的に外国人と付き合っている人も増えています。
これまで、外国人とコミュニケーションをとるには、英語が大事だと思われてきました。でも国内に住む外国人は、日本語がわかる人の方が多数派なのです。だから、多くの外国人に一度に情報を伝えたいときなどは、日本語を用いたほうが早くて確実に伝わります。
ただ、私たちが日常的に使っている日本語では、伝わらないことも多くなります。

事故件数グラフ

例えば、阪神淡路大震災の時には、外国人に的確な情報が早く伝わらなかったため、日本人と比べると、2倍ほどの割合で死傷者が出てしまいました。この反省から、命を守るための「やさしい日本語」の必要性が考えられるようになりました。
このように一般的な日本語を、次のように「やさしい日本語」に変えると、わかってもらえるようになるからです。

やさしい日本語説明イラスト

今、日本社会では、「やさしい日本語」が防災の観点からだけでなく、行政、医療、教育、商業・観光など、仕事や生活のあらゆる場面で情報提供に役立つコミュニケーションツールとして使われるようになってきました。日本人が「やさしい日本語」のコツを学び、地域で暮らす外国人とコミュニケーションをとることで、外国人も日本語が上達し、情報が得やすくなって、日本社会で暮らしやすくなります。
日本人の側も「どうしたら、大事なポイントが伝えられるか」を工夫することで、コミュニケーション能力がアップし、お互いに気持ちを通わせることができるようになるでしょう。
皆さんも、「やさしい日本語」を知り、活用することで、「誰もが生きやすい社会」をともに作っていきませんか。

「やさしい日本語」を広める会について

「やさしい日本語」を広める会は、日本人と外国人が共に生きやすい世の中を作りたいという願いをこめて設立しました。
わたしたちの会では、外国人と話をするとき、まずは「日本語で話してみる」ことをおすすめしています。「やさしい日本語」で話せば、コミ ュニケーションがとれる外国人もたくさんおられます。
「やさしい日本語」を広める会は、皆さんが、外国の方とコミュニケーションをとるときに活用していただけるよう、研修会などで「やさしい日本語」の考え方とコツをお伝えしています。
また幅広く、皆さんの体験や考えをお聞きすることで、よりよい研修会につなげていきたいと考えています。

紹介動画
「やさしい日本語」のコツ
「やさしい日本語」のコツ
■ 心がまえ編

◆話しやすい雰囲気を作る

慣れない日本語で話そうとしている外国人のみなさんは、きっと緊張しています。
こちらが笑顔でゆっくり話を聞こうとすることで、安心して話してもらうことができます。

◆日本の「あたりまえ」≠ほかの国や地域の「あたりまえ」

異なる制度や文化背景のもとで育った人の「あたりまえ」は、わたしたちの「あたりまえ」とは異なります。
かなり日本語が流暢な人でも、常識への理解が異なっているかもしれません。
相手の方とお互いわからないことを聞き合いましょう。

◆伝える前に情報を整理

情報をあれこれ一度に伝えると、混乱してしまいます。伝えたいことを明確にして、それだけを簡潔に伝えるとわかりやすくなります。


■話し言葉編

(以下のコツを使いながら、実際に話すときは、相手の日本語のレベルによって より自然な日本語にしていってください)

◆「はさみ+の法則」で聞き取りやすく話す

っきり、いごまで言う。じかく話す。っくり話す。が大切なポイント)

▽はっきり、さいごまで言い切る。あいまいな表現をしない。
例)今日は仕事があるので、ちょっと・・・⇒きょうは しごとが あるので 行けません。(あしたは 行くことが できます)

▽1文に1つの情報にして、みじかく話す
例)(このバスは)うしろの ドアから のります。まえ から おります。おりるとき、おかねを はらいます。

▽ゆっくり言う
発音をはっきり、ゆっくり話すと かなりわかりやすくなります。音が聞き分けにくい高齢の方にもわかりやすいです。混同しやすい言葉は紙に書くのもおすすめです。
例)ますだ/まつだ びょういん/びよういん いちじ/しちじ(⇒ななじ) かたい/たかい します/しません (語尾まではっきり) きってください/きいてください

◆敬語を使わない・「~です」「~ます」「~てください」で話す・接頭語「お」「ご」はなるべくつけない

かなり日本語が話せる人でも敬語は苦手な人が多いです。「です・ます」でゆっくり話すことで十分丁寧さは伝わります。
例)写真撮影はご遠慮ください⇒ここでは、しゃしんは とらないで ください

◆言い換えをする

▽オノマトペ(擬音語、擬態語)は使わない
日本人はオノマトペに慣れてるので、よりわかりやすく伝えるのに便利です。しかしオノマトペをあまり使わない国は多く、外国の人には通じにくいです。
例)朝からバタバタしている⇒あさから いそがしいです
頭がズキズキする⇒あたまが とても いたい 
ザアザア降っている⇒あめが つよく ふっている

▽難しい単語、熟語ではなく、簡単な漢字・言葉を使う
例)趣味は登山です⇒山に のぼることが すきです
食後に服用してください⇒ ごはんの あとで、くすりを のんでください

▽方言を使わない
親しみはありますが、日本語に慣れるまでは方言は難しいです

▽カタカナ語は気をつけて使う
本来の外国語と発音や意味がちがったり、短い形にしている和製英語は通じないことがあります。実物や写真、イラストがあるとわかりやすいです。
例)インフラ ベビーカー エアコン サラリーマン リュックサック


■書き言葉編

◆書くことを大事なポイントだけにしぼる

なくても問題のない情報を省くことも大事です。日本語に不慣れな人は、どの部分が大切か判断するのも難しく混乱しがちで、文を読むことに時間がかかって疲れてしまいます。
また話し言葉と同様、1文に1つの情報にして短く書きます。AI翻訳を使う場合にも誤訳を避けやすくなります。

◆漢字にふりがなをつける

読み方がわかると意味を調べることができ、読むことがずっと楽になります。ふりがなは、ひらがなの方がわかりやすいです。
参考)ふりがなをつけられるサイト「ひらひらのひらがなめがね」
エクセルのふりがな表示機能も使いやすいです。グーグル翻訳やグーグルレンズなど文章を読み取って翻訳する機能は、ふりがながじゃまになる時もありますが、エクセルのふりがな表示は一括で付け外しができて、便利です。

◆写真やイラストを入れてわかりやすくする

写真やイラストは、間違いのもととなり得る不要な情報を含まないことが重要です。

◆話し言葉のコツも取り入れる

話をする際と同様、「あいまいな表現をしない」「です・ます を使う」「簡単な漢字・言葉を使う」など意識してみてください。